2010-05-11

夢枕獏著「沙門空海 唐の国にて鬼と宴す」

先月末、夢枕獏著 「沙門空海 唐の国にて鬼と宴す」文庫本四巻を読了。延暦二十三年 (A.D.804) の遣唐使船で入唐した空海と橘逸勢が、楊貴妃にまつわる怪事に関わってゆく伝奇小説。きっとまだまだ書きたい事が有ったのだと思うが、それ以上にこの話を完結させてやりたいという気持ちが強かったのだろうと感じる。読み始めは、空海と橘逸勢の関係が陰陽師の安倍晴明と源博雅だなぁと感じるも、進むうちに気にならなくなった。昔の作品に比べ書き方にネットリ感は少ないが、主人公コンビを始めとした登場人物達のキャラクター立てや係わり合いが、実に夢枕獏らしく満足。

但し、長年掲載誌を渡り歩いた所為もあるのか、複数の章で同じ説明をしていたり、逸勢の鳳鳴と言う僧への「存外に良い漢であるかもしれぬ」評が二度ありオヤッと思ったり、劉雲樵の妻•春琴の消息は、胡玉楼の妓生•牡丹がいつの間にかフェイドアウトしてるぞ、といった辺りが気になった。そして、登場人物みんなの事をもっとたっぷり読みてぇ、という気分になるのが大問題かもしれない。

読後、陳舜臣著「曼陀羅の人 空海求法伝」を無性に読みたくなり本棚から引きずり出す。やっぱり面白い。あれ? 上巻で空海に「送声の術」というのを使った女性、中巻で尚珠だと明かされたのに下巻では尚玉になってる事に今更気付いた。